
男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。
停留精巣とは、通常であれば精巣は胎生期に後腹膜から陰嚢内に下降するのに対し、陰嚢内に降りていない状態をいいます。
発生頻度は、新生児期で4.1~6.9%、3か月で1.0~1.6%、1歳時で1.0~1.7%で、このうち2500g以上の成熟時では2.2~2.7%に対し、2500g未満の未熟児では19.8~22.5%と高い頻度となります。また、37週以降の満期産児の3.3~3.4%に比べ、37週未満で生まれてきた新生児では17.3~30.1%と高い頻度となります。
出生後は3か月までに60~70%の停留精巣が陰嚢内に自然効果しますが、その後の頻度は1歳時とあまり変わらず自然降下は望めないようです。
また、停留精巣は、両側に起こる場合と、片側のみに起こる場合があり、左右別ではやや右側に多い傾向が見られます。
▼停留精巣の発生時期と頻度
| 生後 | 割合 |
|---|---|
| 新生児期 | 4.1%~6.9% |
| 生後3ヶ月 | 1.0%~1.6% |
| 生後1歳 | 1.0%~1.7% |
停留精巣の原因は、妊娠中の胎盤からのホルモン異常の可能性が指摘されていますが、確かな原因は不明です。
精巣は診断は、陰嚢と下腹部の触診、超音波検査、MRI検査等で行われます。
左右ともに触知しない両側性停留精巣と、一方が陰嚢内に触知する片側性停留精巣に分けられ、精巣の位置により、腹腔内精巣、鼠径管内精巣、鼠径管外精巣と分けられます。
また、停留精巣に、尿道下裂や鼠径(そけい)ヘルニアなどの病気が合併している場合もあります。
陰嚢内に精巣がないので、陰嚢がやや小さくなっている場合もありますが、触診して確認する必要があります。
触知する停留精巣に対しては、鼠径部切開による精巣固定術が行われます。十分な精巣血管に長さを確保して、陰嚢の皮下ポケットに精巣を固定します。触知しない停留精巣である腹腔内停留精巣は、腹腔鏡を用いて手術を行う場合があります。
妊孕性(にんようせい・妊娠するための力 男性では生殖機能などが影響する)を温存するためにも2歳ころまでに行うことが望ましいとされています。
停留精巣の手術を大人まで行わなかった場合は、精巣機能障害が進行して男性不妊や精巣癌の原因になります。10歳未満で手術を行えば癌化リスクは下がりますが、適切な時期に停留精巣の手術を行っても、精巣発育が障害される場合もあります。
右側停留精巣手術既往があり、代償すべき左精巣側に左精索静脈瘤がある場合は、全般的に精液所見の低下や男性ホルモンの低下がある場合があります。
また、停留精巣の患児が将来子供をつくる能力(妊孕性:にんようせい)は手術で治療しても片側で70~90%、両側で30~65%程度とされています。
子供の頃に停留精巣手術を行っていると、精索静脈瘤が見つかっても、手術を断られてしまうケースがあります。
顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術の手術部位は、停留精巣手術部位と重なるため、精索自体が瘢痕化していて、停留精巣手術後の顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術が難しくなります。
しかし、0.5mmの吻合技術を持つスーパーマイクサージャンが行うナガオメソッドでは、癒着している精管・動脈・リンパ管・神経・逆流静脈を1本1本剥離して分離するので安全で確実に手術を行うことができ、温存した精管・動脈・リンパ管・神経の数や結紮した逆流静脈の数を記録した手術記録を患者様にお渡ししています。
停留精巣術後のナガオメソッド手術の手術記録では、精管1本、動脈6~11本(平均8本)、リンパ管8~19本(平均17本)、神経8~23本(平均14本)を温存し、逆流静脈47~57本(平均53本)を確実に結紮しています。
停留精巣の手術歴があっても、顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術を行うことができます。手術方法についてご質問がある方は、当院のメールでお尋ね下さい。
参考資料
銀座リプロ外科では年間800例を超える精索静脈瘤手術を行っております。中でも永尾光一医師はナガオメソッドにより20年以上、精索静脈瘤手術をしており、その手術数は10,000例程度となります。日本ではまだあまり知られていない診療が多いですが、より多くの患者様に気軽に相談していただければと思っております。
c 2019 Association of Microsurgery, Ginza Reproductive Surgery.