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ステップアップ治療法

不妊治療では、状況に合わせて治療法のステップアップをしながら妊娠を目指すことが基本です。しかし、「どの段階から始めるのか」「次のステップに進むタイミングはどう判断すべきか」などを、初めから明確にわかっている方は少ないでしょう。

 

また、不妊の原因は女性側だけでなく男性側にもあるため、男性不妊治療を含めて考えることも大切です。身体や心の負担を考慮して、状況によっては治療をステップダウン(負担を軽くする方向)する選択もあります。

 

本ページでは、不妊治療の流れを4つのステップに分け、各段階でどのようなことが行われるのかをまとめています。

 

妊娠しにくい原因やご夫婦の年齢によって、適した不妊治療は異なります。ご自身が今どのステップにあるのかを確認し、最適な方法を見つけるための参考にしていただければ幸いです。

 

Step1.タイミング法

不妊治療の最初のステップとされる治療法が、タイミング法です。医師の指導のもと排卵日を予測し、妊娠しやすい時期に性交渉を行う方法で、自然妊娠に近く、身体的・精神的負担が少ないやり方だといえるでしょう。

 

一般的に、不妊治療はステップが進むほど高額な費用がかかり、女性の身体的負担が大きくなります。

 

タイミング法に取り組む際の流れや、治療に向いているケース、成功率と次のステップへ進む目安を紹介します。

タイミング法の基本的な流れ

タイミング法の基本的な流れは、以下のとおりです。

1.排卵日予測に基づくスケジュール決定 基礎体温や月経周期をもとに排卵日を予測する
2.卵胞の状態確認 排卵予定日の2~3日前に受診する
超音波検査で卵胞の発育を確認する
医師より性交渉のタイミングを指示される
3.排卵の時期に合わせた性交渉 排卵日の3日前から複数回性交渉を持つことが勧められる

卵胞の発育が不十分であれば、必要に応じて排卵誘発剤を使用し、確実に排卵されるようサポートを受けるケースもあります。

適している方

以下のようなご夫婦には、タイミング法が適している可能性が高いといえます。

 

・不妊治療に取り組み始めたばかりである

・排卵はあるが、自己判断ではタイミングが合いにくい

・卵子や精子に大きな問題がない


ご夫婦ともに年齢が比較的若い(35歳未満)

タイミング法は、妊活を始めてから時間が経っておらず、「まずは自然に近い方法で妊娠を目指したい」という方に勧められる治療です。男女の生殖機能にともに大きな問題がなければ、排卵日と性交渉のタイミングを合わせることで妊娠率は向上するでしょう。

成功率と次のステップへ進む目安

タイミング法の成功率は1周期あたり16~18%前後であり、半年あれば8割のカップルが妊娠する計算になります。

ただし、次のような場合はタイミング法の成功率は低くなります。

女性か男性に不妊原因がある 5%
女性の年齢が35歳以上である 5~15%

個人差はありますが、タイミング法を始めてから半年ほど経っても妊娠に至らない場合は、ステップアップを検討することが一般的です。タイミング法の途中で女性か男性https://ginzarepro.jp/column/timing-method/の一方に不妊原因が発覚した場合も、早めのステップアップが勧められるでしょう。

 

タイミング法から不妊治療を始めたい|流れや費用をチェックする

Step2.人工授精法

人工授精法は、タイミング法から1つステップアップした不妊治療法です。排卵のタイミングに合わせて、妊娠しやすいよう処理した配偶者の精子を子宮内に直接注入します。

子宮に注入したあとの、卵子と精子が出会って受精するプロセスは自然妊娠と同じなので、副作用やリスクの心配が少なく済む点がメリットです。

人工授精法の流れ

人工授精法の一般的な流れは、以下のとおりです。

1.排卵日予測 月経周期やホルモン値・超音波検査によって排卵日を予測する
2.精液採取 ・排卵日に、できれば人工授精法を行う病院内で採取する
・精液を洗浄・濃縮して運動率の高い精子を選別する
3.子宮内への精子注入 カテーテルで子宮内に精子を注入する

人工授精法の成功率を上げるために、排卵誘発剤が使われる場合もあります。排卵誘発剤は、内服薬から始め、効果が不十分であれば注射に切り替えます。

人工授精法が適しているケース

人工授精法は、次のような原因により、自然な性交渉・タイミング法での妊娠が叶わなかった方に適している方法です。

女性 性交痛がある
・子宮頸管粘液の分泌量が少ない
男性 ・軽度の精液所見低下が見られる
・性機能障害がある
男女双方にかかわりうる ・フーナーテストで問題があった
・性交渉が行えない何らかの原因がある
・原因が不明の不妊症がある

男性が射精した精液中に運動性の保たれた精子があり、女性にきちんと排卵が起こっていることが、人工授精法を行える基本的な条件です。

ステップアップの判断基準

一般的に、人工授精法を3〜4回試して妊娠に至らなければ、次の治療法へのステップアップを考える目安となります。

人工授精法での妊娠率は、1回あたり約5~10%であり、ご夫婦の年齢が上がるとともに低下します。女性の年齢が35歳を超えているご夫婦は、人工授精法を長期間続けず、より早い段階で次の治療に進むよう勧められることもあるでしょう。

卵管に問題があったり、精液所見が著しく低下していたりすると、人工授精法をスキップし、次のステップが優先される場合もあります。

一方、精子の濃度や運動率を改善する方法に精索静脈瘤手術があります。

 

人工授精法について理解をもっと深めたい

Step3.体外受精法

体外受精法は、不妊治療において、人工授精法の次のステップとして位置づけられている方法です。卵子と精子を体外で自然に受精させ、得られた受精卵(胚)を子宮に戻す治療法です。受精過程を一部体外で行い、妊娠の可能性を高めます。

ただし、体外受精法以降のステップは、採卵やホルモン補充といった、女性側が身体的負担をともなう工程が多い方法です。

体外受精法の仕組みと治療の流れ

体外受精法は、女性から採取した卵子の上に精子を振りかけて受精させ、培養したうえで子宮に戻す方法で、次のような流れで行われます。

 

日本産科婦人科学会は、原則として、体外受精法以外の方法では妊娠の可能性が非常に低い・ないと判断されるケースでのみ実施するよう、見解を出しています。

1.排卵誘発 ホルモン注射で卵巣を刺激して複数の卵子を育てる
2.採卵 経腟エコーで確認しつつ、細い針で卵巣から卵子を採取する
3.採精 採卵と同日に精液を採取する
4.受精 1.精液の洗浄・濃縮後に状態の良い精子を選別する
2.採取した卵子と精子をシャーレの上で受精させる
5.胚培養 受精卵が細胞分裂し、着床できる状態になるまで培養する
6.胚移植 発育した胚をカテーテルで子宮内に戻す
7.黄体ホルモン補充 着床率を高めるために注射・内服薬・腟座薬などを用いる
8.妊娠判定 胚移植からおよそ2週間後に行う

採卵日は月経開始から10~14日後のことが多いものの、卵子の成熟具合によって変わるでしょう。タイミングによっては、治療のために急に仕事を休まなければならず、精神的な負担を感じる女性は少なくありません。

体外受精法が勧められるケース

次のような原因で不妊に陥っている場合は、体外受精法によって妊娠率を高められる可能性があります。

女性 卵管に障害がある
・排卵障害がある
男性 ・精子の数が少ない
・精子の運動率が低い

タイミング法・人工授精法を一定期間試しても妊娠できなかったご夫婦も、体外受精法へのステップアップを視野に入れることが必要です。

体外受精法での妊娠率は約20〜50%で、タイミング法や人工授精法に比べてやや高い傾向があります。ただし、年齢とともに卵子・精子の質は低下していくため、体外受精法でも、高齢であるほど妊娠率が低くなることは覚えておきましょう。また、精子の濃度や運動率を改善させる方法に精索静脈瘤手術があります。

ステップアップを検討する目安

体外受精法から、次の治療法へのステップアップを勧められることが多いケースをいくつか紹介します。

 

・卵子に精子を振りかけただけでは受精できない

・精子の数が極端に少ない(重度の乏精子症)

・精子の動きが極端に悪い(重度の精子無力症)

・精子の形態異常が多い


体外受精法や顕微授精といった高度な生殖補助医療は、妊娠率を高められる一方で、費用が高額となることもあります。ステップアップは、ご夫婦と医師でよく相談して決めてください。

また、精子の濃度や運動率及び精子の質を改善する方法に精索静脈瘤手術がありますので、選択肢の1つとしてお考えください。

 

体外受精法はどのようなスケジュールで進む?治療はつらいのか調べてみる

Step4.顕微授精

不妊治療の最後のステップともいえる、最も高度な方法が顕微授精です。

顕微授精は、採卵した卵子1つに、精子1つを注入し、人工的に受精させる方法です。卵子と精子が1つずつあれば行えるので、重度の乏精子症はもちろん、精液中に精子がいない無精子症でも、精巣から手術で精子を回収できれば妊娠が目指せます。

顕微授精の流れ

顕微授精の流れは以下のとおりで、採卵・採精までは体外受精法と同様です。

1.排卵誘発 ホルモン注射で卵巣を刺激して卵子の発育を促す
2.採卵 卵巣から卵子を採取する
3.採精 採卵と同日に精液を採取する
4.受精 1.状態の良い精子を1つ選ぶ
2.ピペットで卵子の中に精子を注入して受精させる
5.胚培養 受精卵を体内と同じような環境下で培養する
・母体が移植に適するタイミングでなければ凍結・保存する
6.胚移植 状態の良い胚を子宮内に戻す
ホルモン補充治療により着床率を高める場合もある
7.妊娠判定 胎嚢と心拍が確認できれば妊娠成立と判定される

複数の卵子を採取できた場合は、体外受精法と顕微授精を同時に行い、1つも受精が成立しないリスクを軽減させることもあります。

顕微授精が必要となるケース

顕微授精は、以下のような場合に検討されます。

 

・体外受精法で妊娠が成立しなかった

・卵子の透明帯(殻のような層)が硬く、精子が中に入れない

・精液中に精子が確認されない

・精巣内精子採取術(TESE)を受けた

 

体外受精法と同様に顕微授精でなければ妊娠できないと判断されるケースでのみ実施することが原則です。妊娠率はおよそ20%で、重度の不妊症でも妊娠が叶う可能性がある一方で、誰にでも行われる治療ではないことを理解しておきましょう。

男性側の治療としては、精子の濃度や運動率及び精子の質を改善する方法に精索静脈瘤手術がありますので、選択肢の1つとしてお考えください。

顕微授精の懸念点

顕微授精は、不妊に悩むご夫婦にとって希望となりますが、以下のような懸念点もあります。

 

・排卵誘発剤の使用によるリスクがある

・受精の際に卵子に穴をあけることがダメージとなりうる

・胚培養士の力量に成功率が左右される

・定期的な通院が必要となる

・高額な費用がかかることが多い

 

排卵誘発剤のリスクとして、卵巣が過剰に反応する状態になることが挙げられます。卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼ばれ、場合によっては入院が必要となる症状です。

 

顕微授精は多くの工程を要するため、特に女性が定期的に通院しなければならず、費用も高額となるでしょう。

 

また、後述しておりますが、精子の濃度や運動率及び精子のDNAダメージの改善の方法として、精索静脈瘤手術も選択肢の1つとしてあります。

 

自分には顕微授精が必要?治療法についてもっと詳しく知りたい

男性不妊治療との違い

ご夫婦で行う不妊治療と男性不妊治療の違いは、以下のとおりです。

ご夫婦で行う不妊治療 治療を試して妊娠が叶わなければ基本的にステップアップする
男性不妊治療 原因の改善によりご夫婦で行う不妊治療のステップダウンが望める

妊娠に至らず悩むご夫婦のうち、約半数は男性側にも原因があるといわれており、妊娠を望むのであれば男性の不妊検査は欠かせません。

男性不妊治療は、精子の量や質、射精の状態の改善が基本です。不妊治療は段階が上がるほど負担が大きくなりますが、男性側の要因の改善により、ステップダウンの可能性があることを知っておきましょう。

男性不妊の改善で治療のステップダウンを目指せる

男性に不妊の原因がある場合は、改善によって治療のステップダウンが望めます。男性側の要因を改善した場合に期待できるステップの後退の例は、以下のとおりです

精液所見の改善 高度生殖補助医療レベルから人工授精法やタイミング法への後退が望める
精路通過障害の改善 顕微授精から体外受精法・人工授精法への後退を検討できる
性機能の改善 性交渉による自然妊娠が期待できる

ステップダウンにより、身体的・経済的負担は大きく軽減されるでしょう。

ステップダウンできるケースとは?

次のようなケースは、治療によって改善が期待でき、不妊治療のステップダウンにつながります。

不妊原因 妊娠における影響 治療法
精索静脈瘤 ・精液所見の低下
・精子DNAの損傷
・精巣機能の低下
手術
精路通過障害 乏精子症・無精子症 手術
性機能障害 性交渉が困難 薬物療法

精索静脈瘤は、男性不妊の原因のうち最多であり、およそ4割の方に見られる病気です。

精索にある静脈が拡張して瘤のようになり、血液がうっ滞することで精巣機能が低下します。結果として、造られる精子の数・運動率や形態が悪化したり、DNAが損傷したりします。

手術によって精巣の環境が良くなれば、精子を造る機能も改善するでしょう。

不妊に関するお悩みは当院へご相談を

不妊に関するお悩みは、当院へご相談ください。当院は、男性不妊専門のクリニックとして、精索静脈瘤の検査・治療を中心に手がけています。

不妊治療の進め方は、原因・年齢・既往歴によって異なり、男性に要因があった場合は、治療によって負担を軽くできる可能性があります。治療の流れを理解したうえで、医師に相談し、ご夫婦にとって最適な方法を選択しましょう。

「男性側に不妊の要因がないか知りたい」と思ったら、ぜひ当院で診察と超音波検査を受けてみませんか。

 

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